2012年12月28日金曜日

運慶作大日如来像 円成寺

忍辱山 円成寺

 

奈良の東北方面にバスで向かうこと約30分、曲がりくねった山道のバス停のほど近い山里の寺、
 それが『忍辱山 円成寺(にんにくせん えんじょうじ)』
 近鉄奈良駅向いのバスセンターで詳しい行き方を教えてれる。              

阿弥陀堂(本堂)
円成寺は寺の前に広がる浄土式庭園も、名園と言われているようだが何より、素晴らしいのは「運慶作 大日如来坐像だろうと思う。山門を入ったすぐ左側に朱塗りの多宝塔が控えている。本堂 阿弥陀堂も味わい深い建物で、本尊
阿弥陀如来像や見事にそろったな四天王像が置かれている。 畳の本堂に上がってまじかに拝観ができる。
多宝塔
国宝大日如来像


その本堂から離れて、多宝塔の中に一体で置かれているのが、この真言密教の根本仏「大日如来坐像(国宝)」だ。
この像は、慶派の仏師
運慶の制作した初めての作品として、有名。

運慶は康慶から始まる慶派の仏師で、最も有名なのは、東大寺南大門に堂々とそびえたつ金剛力士像(阿形 吽形)だろう。
運慶と快慶が共に仏師たちのリーダーとしてチームを編成し、木造寄木つくりの金剛力士像を作ったと記憶している。
その運慶の仏師としてのデビュー作がこの大日如来像と紹介されている。
国宝を守るためであると思うが、この多宝塔は南向きに建てられており、正面には厚いガラスで守られている。
2回の訪問だが、いずれも太陽光線にさえぎられて、ガラスに触れるくらいに顔をよせないと、きちんと見ることができない。
が、なんと、このガラスの前に、紙で作った手作りのメガネのようなものが置かれている。
確かに、このメガネをつけるとよく見える。
寺の人の配慮か、拝観客の持ち物かは不明だが、何とも不思議なメガネだ。

左に紹介してあるのが、浄土式庭園。
私が訪れた中で、秋の紅葉の時期が最も印象ふかい。
朱色に染まった山がまるでこの円成寺全体を包むような感覚を覚える。庭園の池も、この写真よりはすっきりと静かに、まわりの木々の紅葉を写していた。

奈良の遅めの紅葉を、体全体で感じられる山里の寺。忍辱山 円城寺は、そんな場所・・。

運慶作大日如来坐像
時間をかけて、ゆっくりと訪ねたい寺の一つだと思う。


 

 





2012年12月19日水曜日

次は円成寺 運慶作 大日如来か法界寺 阿弥陀如来像か・・思案投げ首中・・。

2012年11月24日土曜日

女人高野 室生寺

 <女人高野 室生寺>              


室生寺は国宝11面観音を紹介してあるが、寺全体として、やはり詳しく紹介しないといけないところだろう。
女人禁制の高野山金剛峰寺にたいして、女性がお参りできる真言密教の寺院として役小角が建立したと伝えられて
いる、山深い寺が室生寺だ。女人高野として名高いが、男の私にとっても極めて心に残る寺の一つである事は事実だ。
日本最少最も美しい五重塔(私見)

この寺は、土門拳が晩年、雪の室生寺を撮るために5年の月日をかけたと、彼の写真集に紹介されてあったと思う。
私も、4回か5回は訪ねているが、残念ながら雪の室生寺を訪れたことはない。
*なんと予告のままにしておいたら12月8日放送の「美の巨人たち」で室生寺五重塔を紹介してしまった。

 
その中で土門拳はこの寺を40数年追いかけたと紹介していた。
国宝11面観音立像
この遠景モノクロ写真は室生寺金堂のわきから遠く階段の先に五重塔を望む
室生寺風景。























5月から6月頃は石楠花の寺としても、また、深山紅葉の名所としても有名であるが、一面白銀に覆われた室生寺は、どれほどのインパクトがあるのだろうか。
土門拳のこだわりの本質がなんとなく理解できそうな気がする寺であることは、私も確信を持って言える。

私もここ数年のうちに、雪の室生寺に身を置いてみたい願望に駆られる。

寺の雰囲気から始めたが、室生寺は仏像の質も大変、大変好きなところだ。
いよいよ本論に入ろうと思う。

<金堂>下段に紹介した金堂の諸仏はいずれも質の高い作品だと感じる。
本尊釈迦如来立像(国宝)を中心に、薬師如来、文殊菩薩、地蔵菩薩、そして、国宝11面観音像が立ち並ぶ。
以前の回で紹介したが、この11面観音像は、国宝11面観音像なかで最も若々しい。凛々しさの残った若者のような雰囲気を感じさせる。ちょっと暗めの金堂であったように記憶しているが、じっくり眺めれば眺めるほど、端正で若々しい観音様を感じる。

この金堂の中で、もう一つ注目すべきは12神将像ではないだろうか。他でみられる12神将のようないかめしさはほとんどなくいささかユニークな雰囲気を漂わせてはいる。

それは、まるで今の今までおどけて動き回っていた12神将が突然動きを止めた瞬間のような感じを与えている。

釈迦如来像
左の写真が金堂の諸仏の姿だが、中央に釈如来立像(国宝)がおかれ、その周りを薬師如来、文殊菩薩像などが立ち並んでいる。

中でも、左端に見える国宝、11面観音像は大変
好きだ。

この写真の前に様々な姿で立ち並んでいるのが、重文12神将像だ。一体一体じっくりとみれば見るほどユニークな姿をしている。
小ぶりで、威圧感はないが、独特の存在感を示している。
新薬師寺でも紹介したが、12神将は薬師如来を守護する眷族。
東寺、興福寺その他たくさんの12神将があるが、それだけを訪ねても楽しい。

最後に、室生寺本来の仏像ではなく、他寺からの預かりの仏像、客仏として、
国宝釈迦如来が置かれている。(写真下)
この像は、時間をかけて眺めれば眺めるほど、完成度の高い釈迦如来像だと思う・。
あまり詳しく調べたことはまだないが、ぜひじっくりと拝観されることを願う。

とまれ、女人高野室生寺、次回は是非、雪景色のなかのモノクロームのような室生寺に身を置いてみたい。

2012年11月19日月曜日

千手観音の話

唐招提寺千手観音像
唐招提寺千手観音の手の部分

千手観音像の話


千手観音像には様々な形がある。
一般的な千手観音像は11面42臂(ヒ 一般的に肘から腕までのことをいうらしい)が最も多い。

胸の前で合掌する2本の腕を除いて40の手で囲まれている。また、40本の手は天上界から地獄まで
25の世界があるという
仏教の教えに基づいているようだ。

大阪葛井寺千手観音
 また、眷族として28部衆を従えているのが最も正しい(?)千手観音様の姿のようだ。

その意味では前に紹介した京都三十三間堂の1001体の11面千手観音の姿が、唯一現存する千手観音様を象徴するものだろうか。

しかし、私の知るところでは日本に3体の千本のお手を持っておられる観音菩薩がおられる。
一つが、唐招提寺の千手観音像だ。10年ほどの解体修理を経て、昨年からか直接拝観がかなうようになったが、その大きさと迫力は素晴らしい。
ただ、唐招提寺は盧舎那仏、薬師如来、そしてこの千手観音様と3体で
語らなければならない仏様なので、詳しくは後述しようと思う。
2体目が大阪葛井寺におられる国宝千手観音様だ。坐像で、ちょうど人が座っているような大きさだが、その見事に整った顔や1000の手の整然とした形は、ただ、美しいの一言に尽きる。やさしく、端正な顔立ちで、訪れる人を必ずや満足させてくれる観音様だろう。
寿宝寺11面観音(重文)
三体目が京田辺市、観音寺へ向かう三山木の駅からほど近い場所にある「寿宝寺」の重文千手観音さまだ。
この観音様のおられる寿宝寺は訪れる拝観者も少なく、お寺の住職やおかみさんがお堂の中で丁寧に説明をしてくださる。この観音の置かれた本堂は小さいが観音は2m近くはあるだろう。観音のすぐ近くにすわり、詳しい説明を聞くことができる。なにより不思議なのが明と暗のお顔の違いだ。お堂は暗くしたり、明るくしたりすることができる。
その明暗の変化に合わせて、顔が二つの全く違う仏様に変化する。
この写真は暗い時の顔だが、人を迷わせるすべての悪を許さない、力強く、怖ささえ感じる顔になっている。
明るいところでみる観音は、顔がまさに別の観音のように返信し本当に慈悲のお顔そのものに変わる。

私は、ニッポンでは実際に千本のお手を持った千手観音様を他に知らない。
そして、この3体の千手観音像は一つ一つの世界を守護しようとしてくれているのだろう!!

2012年11月18日日曜日

重文 伎芸天像

 我が国でただ一つの伎芸天像


国宝仏像に少しくこだわってきたが、重要文化財の仏像で、今日の女性の仏像ブームを創り出した一つとも言って
本堂
いい仏様が、、秋篠寺伎芸天像だろう。伎芸天像としては我が国唯一とも言われているが、本当に伎芸天なのかは諸説あるようだ。学問的な考証は別にして、一体の仏像として、女性的で知的な”美しさ”を感じさせる代表的な仏像といえるだろう。


大和西大寺駅からバスで10分程度か、奈良の古い町並みと畑道の中を走るようなバスに乗ると
すぐに到着する。秋篠寺はもちろん、国宝の本堂や伎芸天であまりに有名であることはもちろんだが、お寺全体の風情がなんともいい。苔むした庭を眺めながら寺の中へ入っていくと、急に木立の無い、開かれた場所に秋篠寺本堂が
あらわれる。

この本堂は、12神将の新薬師寺や唐招提寺の本堂を少し小さくしたような感じを与えるが、さほど大きくはないが、どっしりとした、実に落ち着いた気持にさせてくれるお堂だ。
伎芸天像

この伎芸天像は、伝伎芸天像と言われているが、言うまでもなく、頭部と体部とが時代も作り方も全く異なっているということだろう。頭部は脱活乾漆で天平時代作、体部は木造で鎌倉時代作と紹介してある。頭部に合わせて、後に、体を作って合わせたものだろう。それにしても全く違和感がない。その全体のバランスのよさと、美しさは諸仏の中でも群を抜いている。秋篠寺には、帝釈天、梵天像(一説によれば(日光・月光菩薩像)や地蔵菩薩、木造11面観音立像などが、寺所蔵仏像として紹介してあるが、奈良博、東博、京博の3代国立博物館に寄託してあり、すべての仏様を拝観できないのは大変残念だ。
本堂の入り口のすぐ近くに、かすかなスポットライトを浴びて、伎芸天像が置かれている。工事前の東大寺法華堂と
この秋篠寺は、中に座って眺めることができる形になっている。訪れる客をやさしく、やさしく迎えてくれるお寺である。
 
行きはバスやタクシーで訪れ、帰りは秋篠寺から大和西大寺駅まで、のんびりと歩いてかるることが好きだ。
多分20分から30分の間くらいであったと思う、大和の山々、そして町並みをゆっくりと眺めながら訪れてみてはいかがだろうか。
 
 
 
 

2012年11月12日月曜日

名刹 興福寺

四天王像

 <国宝物の宝庫 興福寺>

五重塔、猿沢の池、奈良公園、鹿・・・。興福寺を紹介する言葉に枚挙はないが、
東大寺や法隆寺にも劣らない仏像の宝庫が興福寺だろう。

但し、興福寺の仏像は国宝館収蔵から、東金堂、南円堂、北円堂と分散して
置かれているために、その全体像を把握しにくいが、おそらく20体を超える
国宝仏がちりばめられている。
北円堂の無着・世親像などは比較的拝観時期が長く、お目に書かれる機会も
少なくはないが、南円堂の不空羂索観音像や、四天王像にお目に書かれる
12神将像
機会は非常に少ない。
私も一度しか拝観はかなっていないが、ガイドブックによれば(記憶にはない)
10月の17日のみの特別拝観となっている。
四天王像は、最古の法隆寺四天王像、東大寺戒壇院
四天王像とこの興福寺南円堂の四天王像が、三大四天王像
と私自身は感じている。
法隆寺四天王は比較的垂直に屹立し、”静”のイメージ。
前に紹介した戒壇院四天王は、流れるような動きの中に
あって、一種の静寂と智を感じさせる。
それに比して、興福寺四天王像は、まさに動そのもの。
憤怒の表情で仏を守護しようとしている。



 12神将は国宝館の隣にある東金堂にあり、重文薬師如来と、日光・月光菩薩を守護するように取り囲んでいる。
 この12神将も新薬師寺、室生寺などの12神将像などと同じく、その動きを止めた瞬間の美しさは動の中の静といっ
 た空気の流れを止めるようなうつくしさだ。


金剛力士像

興福寺国宝館には、あまりにも有名な
阿修羅像をはじめ、息を飲むような
仏様が圧倒的な迫力で迫ってくる。

阿修羅は釈迦如来の眷族(従者、配下といった意味か・・)八部衆の一つ。
実物は意外に小さく、まさに少年のような表情で静かに佇んでいる。

この国宝館の中で私が個人的に魅力を強く、強く感じている仏像が
1.金剛力士像(右)
 身体の骨格や筋肉、そして血管のあり
 かさえ感じさせる、最も激しい金剛力  
 士像だ。 
2.天燈鬼・龍燈鬼像
 実にユニークな表情の中にあるが、そ
 の全体の造形の美しさは群を抜いて
 いる。
 
    
3.最後が下段に紹介した「山田
  寺の仏塔」
  山田寺の火災の中で、唯一焼け残った薬師如来の仏頭と紹介され
  ている。

天燈鬼・龍燈鬼像
この穏やかなお顔をした薬師如来像は、全体としてお目にかかった
  らどのような姿をしていたのだろうか・・・。
  想像するだけでも楽しくなってくる。

 以上興福寺には拝観したい国宝仏が非常に多岐にわたっている。

山田寺仏頭


 

天龍鬼・竜燈鬼像は他に走らない。解説書によれば四天王に踏みつけられていた邪鬼を立たせ、灯篭も持たせて仏前を明るく照らす役割を与えたものとあった。

 国宝館と東金堂は、いつでも拝観可能と記憶しているが、南円堂と北円堂
 は拝観時期に制限がある。それぞれの期日をじっくりと調査し、腰を据え
 て、訪れれば、一気に20体余りの国宝物にお目にかかれる素晴らしいお
 寺だと思う。

 ゆっくりと興福寺をお試しあれ!!!






2012年11月10日土曜日

福島 勝常寺

 福島 勝常寺


滋賀、京都、奈良と関西方面の仏像めぐりを続けてきたが、福島でお会いし私自身、大変驚き、感激した仏様を紹介しよう。

東北には、伊達氏三代の栄華の象徴として「中尊寺金色堂」があまりに有名で、世界遺産指定後、観光客が引きも切らないようだが、東北、福島に本当に素晴らしい仏様がおられる。

中尊寺の阿弥陀三尊と極楽浄土を願った金色に輝く金色堂ももちろん素晴らしいことは言うまでもない。

だが、訪れる人もほとんどいない福島県の北会津のさらに宮城よりの湯川村勝常という場所でお会いした薬師如来坐像と日光・月光菩薩の三尊は本当に素晴らしい仏様であった。
現在は本堂には本尊薬師如来像のみで、日光・月光の両脇侍は収蔵庫の中に置かれている。
ガイドブックではお目にかかっており、一度は訪ねたいところであったが、写真と実物の与えるインパクトは全く異なる。
日光・月光菩薩とも一木で、像高は170㎝くらいであったと思う。
その両菩薩より、少し大きい薬師如来像も欅の一木で、漆塗の上に金箔で
装飾されていたようだ。

薬師如来、日光・月光の薬師三尊は奈良西の京の薬師寺があまりにも有名だが、漆の艶が今もって感じられ、完成度としては圧倒的な薬師三尊は薬師寺
であることに全く異存はないが、私の好みから言えば、この勝常寺薬師三尊は、はるかにインパクトが大きかった。
あまり、私自身の期待が大きくなかった割りに、実際のお目にかかった時のインパクトが大きすぎたのかもしれない。


この勝常寺の三尊像は、本当に素晴らしい作品だと感じる。本尊も両脇侍も実に静かに、それでいてふっくらと穏やかにその前にいるものを包み込んでくれるような気持ちにさせられる。わずかに腰をひねり、まるで11面観音様を彷彿とさせる    
                  たたずまいだ。そのボリューム感も圧倒的と言っても良いだろう。
                  これだけの仏様にはなかなかお会いできないと思う。
私がお訊ねした仏様の中で、ガイドブックや写真集の中で感じていた仏様と実際にお目にかかった時に印象が大きく違う仏様の代表がこの勝常寺の三尊であることは間違いがない。長い時間拝観していればいるほど、その美しさや完成度を感じさせてくれる仏様である。冬場は拝観できないし、また、そのアクセスは極めて悪い。レンタカーやマイカーでお訊ねするのがベストだろう。
しかも、事前予約が必要だ。もし、このお寺が奈良や京都にあったら、おそらく人気ベスト10に選ばれるような仏ではないだろうかとさえ思える。
そう、日光・月光両菩薩像は秋篠寺の伎芸天の美しさと11面観音さまの造形美を兼ね備えていると言っても過言ではないだろう。
一度お訊ねすることを是非ともぜひとも進めたい・・。

2012年10月22日月曜日

お願い!
こんなはずじゃなかったのですが、今結構忙しく、次に進む時間がありません。
気持ちを奮い立たせるために、極めて少数の読者ですが。匿名でいいですから、欠陥や
違う視点の情報の希望など書いてみてください。失礼しました。

2012年9月26日水曜日

浄瑠璃寺・岩船寺

<浄瑠璃寺・岩船寺>


この両寺はともに京都府木津川市にあるが、私の印象では奈良のお寺という感覚が非常に強い。アクセスとして一般的なのがJR奈良駅、近鉄奈良駅向いのバスセンターからという事かもしれない。                          加えて、お寺の雰囲気がなんとなく京都っぽくないというのもあるのかもしれない。ひなびた山郷の中の寺という風情だ。
9体阿弥陀仏
奈良駅から30分ほど、ほとんど山中といった風景の中をバスにゆられていくと、曲がりくねった道の先に、浄瑠璃寺のバス停があらわれる。    
浄土の池と阿弥陀堂
                 
バス停から、数件の土産物屋などに挟まれた小道を歩き、その先の石造りの参道を行くと、山門の向こう、寺の中心
に池が見える。ご本尊9体の阿弥陀如来のおられる阿弥陀堂の前に広がる浄土の池だ。
浄瑠璃寺はその全体の”景色(雰囲気)"がなんともいい。
山門をくぐった左側の小高い丘のうえ、木々の向こうに朱色の国宝三重の塔が建つ。
この方向は東側。まさに東方瑠璃光浄土から、衆生を守護してくれる、薬師如来像を本尊にしている。
そして山門の右側、西方に建つのが阿弥陀堂・・。そのお堂の中に 9体の阿弥陀如来像(国宝)が置かれている。
この9体の阿弥陀像は、阿弥陀堂のそれぞれの9枚の扉の中央に置かれている。

9体の中心にひときわ大きい阿弥陀像があり、その両側に4体づつの阿弥陀像が置かれている。

9体の阿弥陀仏をまつるためのお堂で、現存する唯一のものと聞いている。

お寺全体で表現する「宇宙」を釈迦如来が守護し、東方浄土から薬師如来が病や飢饉、災難などから衆生を守る。
そして、来世の幸せまでもを9体の阿弥陀様が受け止めてくれる。

私には一つの仏教宇宙が表現されているように思える。私にとっても唯一のお寺だ。

秘仏で見られる機会は少ないが、厨司の中に置かれた吉祥天女像(重文)がある。
女性に人気の像だ。80㎝くらいの像高と記憶しているが、ふくよかで実に穏やかな表情をしている。拝観日を調べて訪れることを薦めたい。

蛇足だが、山門の手前左側の小道の先に、ひなびた定食屋がある。 麦とろ定食が名物だ。

 浄瑠璃寺から徒歩では1時間くらいだが、浄瑠璃寺拝観後、同じバスで行くことができる。
このお寺も山寺としての風情がなかなかいい。
岩船寺三重の塔
阿弥陀如来像
阿弥陀像(重文)は、光背が大変珍しく、大小二つの丸い光背がつながった形をしている。像高も3メートルくらいはあったと思う。
なんとなく、心の緊張を解き、拝観する人々の心をほっとさせ、和ませてくれるように感じさせる。好感を抱かせるお像だ。

本堂の左奥に、新緑か紅葉かは別にして、山寺を彩る浄瑠璃寺の三重塔より一層鮮やかな三重の塔が建つ。

浄瑠璃寺・岩船寺は拝観者にとって問題はアクセスの悪さだろう。平日、休日とも1時間に1本で一日6本くらいの
   バスしかない。浄瑠璃寺前で降りて拝観し、1時間後のバスで岩船寺に向かう。帰りのバスの時間を調べて、岩船
  寺をを拝観するという方法が良いのではないだろうか。(逆ルートもありそうだ。岩船寺に直行し、帰りに浄瑠璃寺を
 拝観して2本後のバスで帰るという方法だ、これはまだトライしたことはないが・・・。)浄瑠璃寺に途中駅からに向か
う山道は当野の野仏や磨崖仏が多くある。ウォーキングをかねて、途中駅で下車し、野仏や磨崖仏を眺めながら
浄瑠璃寺に向かうのもいいコースだ。結構、上りも多く細い道も多いので,春の新緑の頃か秋の紅葉の頃なら、こ
れはお勧めだ。浄瑠璃寺には4、5回訪ねた私もも当野を歩いたのはただの一度、。偉そうな事は言えないが・・。
この浄瑠璃寺も一度訪れれば、きっと何度も足を運ぶお寺になるに違いない。

2012年8月19日日曜日


≪11面観音菩薩物語≫

日本の仏像は如来、菩薩、明王、天部までを言うならの種類はとても私の頭では覚えきることはできない!

覚えてる中で最も印象深く、すこぶる心に止まる仏様が11面観音像だ。日本には現在国宝11面観音様は7体だ
  と記憶している。滋賀高月の渡岸寺観音堂の11面観音像、奈良桜井の聖林寺の11面観音像の二つの仏様は既述  したが、   永島ベスト30の中には6体の11面観音像が含まれている。ただ、1体含まれていないのが、京都六波    羅密寺の11面観音像だ。これは理由は明確、未だ観音像そのものにお目にかかっていないというだけに過ぎない。この11面 観音像は「辰年ご開帳」。まさに今年が辰年、今年の11月から12月にかけての1か月間、12年に1回お目にかか  ることができる。待ちに待った辰年、今年、どんなことがあっても訪れようと思っている。これで間違いなく7体の11 面音様がすべて、根拠のない永島ベスト30の中に含まれることになるだろう。今から楽しみでならない・・。
聖林寺11面観音像 4


渡岸寺観音堂
11面観音像、1
京田辺市・観音寺
11面観音像 2
法華寺11面観音像 3

11面観音は深い慈悲によって、迷える衆生から一切の苦しみをなくしてくれる菩薩で、しかも現世も来世も手を差し伸べてくれると、教えていただいた。

その立姿も、わずかに腰をひねった姿で女神像に例えられることが多いようだ。

多くの衆生を救うという意味からほとんどすべての11面観音像は体のバランスに対して右手が長くなっているようだ




上段に紹介してある11面観音のうち、渡岸寺観音堂(向源寺)、と聖林寺の11面観音はすでに紹介したが、京田辺市(近鉄三山木駅からタクシーで1000円未満)にある観音寺の11面観音像は作品としては、非常に完成度が高いと思う。大きさ、制作方法、時代から聖林寺の11面観音と比較されることが多い。この観音寺を訪問する人は聖林寺よりももっと少ないだろう。誰かの俳句で、京田辺に過ぎたるものがある、その代表がこの観音寺の11面観音と詠われたことを記憶しているが、素晴らしい出来栄えと感じる。このお寺には老住職と若住職の二人のうち、どちらかが説明を直々にしてくれるが、この二人のご本尊に対する思いは実に深い。
そして、何より好きなのは、観音様は木造の本堂にあり、その数10センチ
くらいまで近寄って拝観することができる。
携帯での写真撮影まで許してくれた。(この話はオフレコ・・かも)
次が右に紹介した法華寺の11面観音様だ。この観音様は「光明皇后」をモデルに制作されたと聞いたが、像高1メートルくらい。わずかに腰をひねり右足の親指が、わずかに上を向き、まるで歩き出す瞬間のように見える。
この11面観音も和辻哲郎や亀井勝一郎などが美貌で豊満な女体のようだと讃えていた。
法華寺11面は一年のうち春と秋のある時期にしか公開をしていない。


秘仏六波羅密寺11面観音
左端が今年辰年ご開帳の六波羅密寺11面観音だ。実際にご本体にお目にかかった時に特別に紹介したい。

国宝11面観音の中でも、私には最も若々しく見えるのが女人高野「室生寺」の
11面観音だ。本尊釈迦如来や、薬師如来、重文12神将などとともに室生寺金堂の中に置かれているが、中でも最も美しく完成度の高い仏様が11面観音様だろう。室生寺はこのほか客仏国宝釈迦如来像や、最も小さく最も美しいと言われる
国宝五十塔などもあり、山深き女人高野として、きっと何度も訪ねたくなるお寺に違いない。 
最後になってしまったが、大阪藤井寺市の尼寺「道明寺」の11面観音様だ。
優しくもあり、時には厳しい表情にも「変化」するように見え、全体的に調和のとれた
「彫刻」として見ても素晴らしい傑作であり、この11面観音像も手を伸ばせば触れるようなところで拝観できる。私のメモ帳には毎月18日と25日が拝観日とあった。まだ、一度しか
お目にかかっていないが、もう一度ゆっくりと拝観したいと思っている。




室生寺11面観音
大阪道明寺11面観音
国宝ではないがお目にかかりたい11面観音様はまだまだ、たくさんある。琵琶湖の北、いわゆる湖北には40数体の11面様がおられる。私は車で、訪ね回る旅もしたが、それでも三分の一くらいしかお目にかかっていないだろう。その一つが向源寺に比較的近い木之本駅が最寄駅の石道寺の11面観音像だ。
まるで村娘のようだといわれ、村人たちの深い信仰心で、村の宝物として守られていた。

石道寺11面観音・重文

   羽賀寺11面観音・重文
      11面観音様話ひとまず終了。
最後に、小浜羽賀寺の11面観音様も紹介しておきたい。小浜ではあるがあまりにも不便な里山にあった羽賀寺・・。その11面観音様だ。体中に創建時の朱色を色濃く残しており、長く長く伸びた右手も大変印象深い。小浜のサバや港にあがった新鮮な魚を食べるついでに訪ねてもいい。










2012年8月11日土曜日

聖林寺 11面観音立像

奈良桜井の郊外、奈良盆地を見下ろす小高い丘の上に、むしろ寂れているような感じさえ与える小寺が聖林寺だ。

この本堂に置かれたご本尊地蔵菩薩は、いささか拍子抜けするくらいのんびり、のっぺり(失礼)している。
この本堂の回廊から、石段を上った奥に、国宝聖林寺11面観音像が置かれている。

木心乾漆像(木の枠の上に布や木くずを漆でまとめて、像の形を造る。)
この観音様は奈良時代の終わり、天平時代を代表する傑作と言われている。
11の頭上面のうち、2、3面は失われている。
しかし、像高2m以上、しかも70センチほどの台座の上に置かれた観音像は、一瞬で
人の邪心を射ぬく、眼光をしているように感じる。
おそらく初めてお目にかかった時の私の感情は「畏怖」という言葉ではなかったかと思う。

しかし、その像の前にしばし身を置き、拝観していると、ゆっくりと自分の心が解放され
ていく。最初にお目にかかったのは、もう20年も前になるが、その時、私の頬には
言葉で表すことのできない“涙”が自然と流れてきたことが忘れられない。
(その時、心に大きな罪を背負っていたとも思えないが・・・)

その後、4~5回は訪ねただろう。橿原神宮や桜井周辺には訪れる場所はいくつかあるが、
この周辺を訪ねた時、どうしても訪れないで済ますことがができない観音様だ。

11面観音様はほとんどがわずかに腰をひねり、身体に比してやや長い右手で、迷える
多くの衆生を救うと言われている。
前述の渡岸寺の11面などが代表的と言えだろう。
しかし、この聖林寺の11面様は、正対している。まさに一部の隙も見せないと言っても
過言ではないだろう。

この国宝11面観音像とよく比べられるのが、京田辺市の観音寺の11面観音だ。
私にはいささか違う気がするが、作品としては良く比較をされるようだ。
満開の桜と多武峰
この像は、明治時代に来日した哲学者、美術研究家のアーネスト・フェノロサが激賞したことで知られるようになった。
和辻哲郎も作品『古寺巡礼』(大正8年・1919年刊)でこの像を天平彫刻の最高傑作とほめたたえている。

聖林寺のひそかな楽しみは、拝観者が実に少ないということだ。
最も最近の昨年の訪問では、4,5組の拝観者に巡り合い、にぎわっているという感じさえ受けたが、過去の記憶ではいつも一組か二組であったと思う。
聖林寺本堂横の休憩所では、以前は抹茶を楽しむことができた。今は無いようだが・・。この場所に身を休め、抹茶を楽しみながら、遠く奈良盆地や多武峰を眺めていた。心も時間も解き放たれた自分がいた。
あまり多くの人でごった返すようにはなってほしくはないが、なぜ奈良の仏像拝観者か訪れないのかがわからない。
この近くの長谷寺には老若男女、多くの人々が引きも切らさず訪れるが、この聖林寺にを訪れる人は少ない。
桜井駅からバスで、この聖林寺前を通り過ぎて、中大兄の王と中臣鎌足が蘇我氏打倒の密談を重ねた「談山神社」に向かう人は少なくはない。
間違いなく、この桜井を訪ねることはこれからも相当あるだろう。しかし、談山神社や長谷寺に行くことはないだろう、
だが、この聖林寺に立ちよらない事は無いだろう・・・。


仏像の中でも11面観音が好きだ。現在日本には国宝11面様は7体ある。
次回は11面観音様について書いてみよう。