2013年4月20日土曜日

法華寺本堂

<法華寺11面観音像と

         佐保路の三観音めぐり>

国宝11面観音像のところで少しく紹介したが、やはり1話の主人公になる仏様が、法華寺11面観音像だろう。
白木の一木で、ほとんど彩色等はされていないと思うが、実に印象的で美しい観音様だ。
この法華寺は藤原不比等の娘で、後の光明皇后の創建。
聖武天皇の皇后様・・。加えて法華寺は総国分尼寺としての役も担っている。

国宝11面観音像


この観音様のモデルは光明皇后さまそのものといわれ、まさに女性的な印象を与える。白木の一木で、かすかに口に紅のようなものをさしている。
像はちょうど1メートルくらいであったが数十本の装飾物を、光背のように身にまとい、右足の親指をそっとあげて、今にもこちらに歩んで来られるように思える。

このご本尊は1年の間、厨司の中に秘仏として置かれたままで、春・秋で年間30日から40日程度公開されていた。

この秘仏の置かれている厨司のすぐ横に、もう一つの厨司が置かれていて、ご本尊と全く同じように作られた鎌倉時代の白檀の一木の御分身像がある。この御分身像は拝観日数が長く、比較的容易に拝観がかなうだろうが、できることならご本尊の拝観を強く薦めたい。
女性的という意味では、タイプは異なるが、渡岸寺観音堂の11面観音像と同じような美しさで見る人の心に迫ってくる仏様であることは間違いがない。



11面観音御分身


この法華寺のすぐ近くにある海龍王寺と、少し離れてはいるが徒歩圏内に不退寺がある。この3寺は共同で10月から11月の期間だったと思うが、『佐保路三観音めぐり』という企画を実施している。
法華寺前というバス停から一番近い場所にあるのが「海龍王寺」。
ただ、気持ちとしては国宝11面観音像にお目にかかるということで法華寺から拝観をするのがスジと思うが、ルールはない。

海龍王寺は、法華寺ともども、元は藤原不比等の邸宅であった場所に建てられている。
仏像としての国宝は置かれていないが、佐保寺三観音めぐりの一つとして紹介されているのが、重文11面観音像だ。鎌倉時代の制作とあるが、体を飾っている金泥が、体中を覆っており、制作時のお姿を、色濃く残している。

五重小塔
独自の光背と金泥のお姿から、11面観音様を想像させない、別個の仏様のような印象を与える。

この海龍王寺には触れておかねばならないものがいくつかある。
その一つが、国宝五重の小塔だ。
屋内に置かれた、唯一の国宝五重小塔と紹介されていた。
高さは約4メートル。大きな五重の塔とその作りはほとんど変わらない。

また、海龍王寺には重文文殊菩薩像、愛染明王、不動明王なども置かれていた。
私自身は文殊菩薩のお姿が結構印象深く残っている。
特に目に鋭さと凛々しさを感じた。
今、目の前ではなく、少し遠くを見据えようとする知恵の菩薩、文殊菩薩の姿に心ひかれた。

海龍王寺本堂




重文11面観音像

文殊菩薩像






海龍王寺からは、徒歩ではしばらくかかったが、佐保寺三観音めぐりの最後に訪れるところが不退寺だ。
あまりよく記憶はないが、在原業平が開基したとのことで「業平寺」と呼ばれている。
ここに佐保路三観音の最期を飾る重文聖観音立像がおられる。
建立時の姿を想像することは簡単ではないが、聖観音像としての存在感は十分に感じることができる。
法華寺へは、近鉄大和西大寺駅からバスですぐ、法華寺前でバスを降りてすぐのところにある。
佐保路は貴族たちが豪邸をつらねた天平時代の高級住宅街。恋歌を数多く詠んだ坂上郎女
        (さかのうえのいらつめ)、多くの女性の憧れの存在大伴家持など万葉集に鮮やかな感性を
記した歌人たちも行き来した道。斑鳩や山の辺の道などとともに、天平の時代に思いを馳せながら、のんびりと歩く
には絶好のポイント。春の特別ご開帳も紹介されていると思う。春かこの秋、もう一度訪ねてみたい場所だ。
是非、ともに佐保路の自分を見つけましょう!!。



2013年4月13日土曜日

不空羂索観音坐像

興福寺 南円堂・北円堂特別公開

興福寺の仏像は、国宝館と東金堂に主な仏像が置かれている。人気の阿修羅像を含む八部衆や金剛力士、薬師如来、12神将などこの両方でほとんどの仏様を拝観できる。
この東金堂、五重塔の向い側、南側に南円堂、北側に北円堂がある。
八角形のお堂としては大変美しい。
この両堂は、常時拝観がかなう訳ではなく、毎年比較的短い拝観の期間だったと思うが、今年は特別拝観として4月12日~6月2日まで公開しているとのこと。
以前にもお目にかかってとことはあるが、もう一度訪ねてみたい仏様がいくつかおられる。
南円堂の本尊は不空羂索観音坐像(国宝)。まばゆいばかりの金色にか輝いている、結構大きな観音像だったと記憶している。
不空羂索観音像は、何と言っても東大寺法華堂におられたものは立像であり、圧倒的なインパクトがあったが、この不空羂索観音もいろいろな角度から眺めると大変完成度の高い仏様と言えるだろう。
後に触れるが、北円堂の有名な「無着・世親像」は運慶作だ。
こちらの不空検索観音はやはり運慶の父、康慶の作と紹介されていたとおもう。



 

北円堂は無着・世親像があまりも有名だ。運慶作の代表的作品なのだろう。運慶の作品としては、私は円成寺の大日如来座像が最も好きだ。さらに忘れられないのが、南大門金剛力士像だろう。


南円堂にはこの不空羂索観音像を守護するように置かれている
四天王像も素晴らしい作品だ。

法隆寺の日本最古の四天王像、戒壇院の塑像四天王像がやはり印象深いが、
この、南円堂の四天王像もそのインパクトとしては忘れられない作品の一つだろうと思う。







北円堂にはこの両像の他に、本尊「弥勒如来座像」が置かれている。この如来像は、やはり一見の価値、大いにありだろう。あまり大振りではなかったと思うが、慈愛に満ちた、優しいお顔で私たちを待ってくれている。
もう一つ四天王像が置かれている。この四天王像は南円堂のそれと比すとあまりに印象が異なる。
その意味では、四天王像は結構多数とお目にかかってきたが、一つとして同じ印象のものがない。
まっすぐに立ち、素朴でその存在をあまり強調はしないが、見れば見るほど完成度の高い法隆寺四天王。
圧倒的なインパクトでありながら、静謐を感じさせる東大寺戒壇院四天王像。
法華堂の四隅に置かれていた、大きく威圧的であった四天王像。そしてこの南円堂、北円堂の四天王。時代にはいささかの違いがあるのだろうが、その印象はあまりにも異なる・・・。

近鉄奈良駅を降りて、向かえばすぐ奈良公園、多くの鹿に囲まれながら、壮麗な五重塔と東金堂、国宝館。
そして、南円堂、北円堂。さらに、その先には奈良博。常設展示の作品にも印象深いものが多い。
仏像拝観に疲れたら、さるさわの池から奈良町へ・・。奈良町には旧民家を活用した、食事処やお土産屋も多く。
のんびり散策するには最高のポイントだろう。
仏像と奈良町・・。十分に一日を価値ある日にしてくれるところだろう。
特別拝観に合わせて、「今ふたたびの奈良へ」か・・・。
(JR東海とタイアップは一切していません)

無着・世親像
弥勒如来座蔵
北円堂四天王像




2013年4月3日水曜日

<平等院鳳凰堂>


「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたる
  こともなしと思えば」
 藤原氏全盛時代、栄耀栄華を誇った藤原頼道
 の父、藤原道長が謳った有名な和歌であるこ
 とは説明をまたないと思う。

 浄土式庭園の池の正面に堂々と立つのが鳳凰
 堂だ。

 鳳凰堂の向かい側、池のそばから鳳凰堂を眺
めると、その正面に卵形(真円?)の大きな円が、空いており、中心に見えるのが国宝阿弥陀如来像だ。この像は、慶派のルーツ定朝作であることが実証されている唯一の像だ。前に紹介した法界寺の阿弥陀像と極めて似ているが、法界寺の阿弥陀像は定朝様と言われている。
 


ただ、個人的感想を言えば保存状態はいささか異なるが、同じ作者に思えてならない。
これもズブの素人の見解。全く根拠はない。

平等院はこの鳳凰堂と浄土式庭園そして国宝阿弥陀如来像が有名、加えてこの阿弥陀像の頭上にある『天蓋』も大変、豪華なものとしてみるものを圧倒する。
金色にかがやく天蓋やこのお堂のきらめきは、まさに藤原氏の栄華をそのまま表しているといえるだろう。


加えて、この鳳凰堂で私が圧倒的インパクトを与えられたのは、52体の
『雲中供養菩薩郡』だ。
阿弥陀如来の座している本堂に約半分が壁に取りつくように飾られている。

残りの20数体は宝物館に所蔵されている。
本堂のなかで眺めると頭上に見える雲中供養菩薩は20㎝~30㎝くらいのおおきさを
想像する。しかし、宝物館で実際まじかに見ると驚くほどの大きさだ。
たぶん、ほとんどの菩薩像は同じような大きさなのではないかと思うが、実物は60㎝~70㎝はあるだろう。
この雲中菩薩像はNo.○という形で表現されていたと思うが、当然一体として同じ姿をしたものはない。


あるものは天使のように純粋に、あるものは菩薩としての厳しさを、そしてあるものは妖艶な感じさえさせるものがある。雲中というだけに、すべての菩薩が小さな一人用の雲の乗り物に乗って、様々な姿で私たちを迎えてくれる。
鳳凰堂にはこの雲中供養菩薩だけを拝観に行っても後悔はしないと思う。