2012年11月24日土曜日

女人高野 室生寺

 <女人高野 室生寺>              


室生寺は国宝11面観音を紹介してあるが、寺全体として、やはり詳しく紹介しないといけないところだろう。
女人禁制の高野山金剛峰寺にたいして、女性がお参りできる真言密教の寺院として役小角が建立したと伝えられて
いる、山深い寺が室生寺だ。女人高野として名高いが、男の私にとっても極めて心に残る寺の一つである事は事実だ。
日本最少最も美しい五重塔(私見)

この寺は、土門拳が晩年、雪の室生寺を撮るために5年の月日をかけたと、彼の写真集に紹介されてあったと思う。
私も、4回か5回は訪ねているが、残念ながら雪の室生寺を訪れたことはない。
*なんと予告のままにしておいたら12月8日放送の「美の巨人たち」で室生寺五重塔を紹介してしまった。

 
その中で土門拳はこの寺を40数年追いかけたと紹介していた。
国宝11面観音立像
この遠景モノクロ写真は室生寺金堂のわきから遠く階段の先に五重塔を望む
室生寺風景。























5月から6月頃は石楠花の寺としても、また、深山紅葉の名所としても有名であるが、一面白銀に覆われた室生寺は、どれほどのインパクトがあるのだろうか。
土門拳のこだわりの本質がなんとなく理解できそうな気がする寺であることは、私も確信を持って言える。

私もここ数年のうちに、雪の室生寺に身を置いてみたい願望に駆られる。

寺の雰囲気から始めたが、室生寺は仏像の質も大変、大変好きなところだ。
いよいよ本論に入ろうと思う。

<金堂>下段に紹介した金堂の諸仏はいずれも質の高い作品だと感じる。
本尊釈迦如来立像(国宝)を中心に、薬師如来、文殊菩薩、地蔵菩薩、そして、国宝11面観音像が立ち並ぶ。
以前の回で紹介したが、この11面観音像は、国宝11面観音像なかで最も若々しい。凛々しさの残った若者のような雰囲気を感じさせる。ちょっと暗めの金堂であったように記憶しているが、じっくり眺めれば眺めるほど、端正で若々しい観音様を感じる。

この金堂の中で、もう一つ注目すべきは12神将像ではないだろうか。他でみられる12神将のようないかめしさはほとんどなくいささかユニークな雰囲気を漂わせてはいる。

それは、まるで今の今までおどけて動き回っていた12神将が突然動きを止めた瞬間のような感じを与えている。

釈迦如来像
左の写真が金堂の諸仏の姿だが、中央に釈如来立像(国宝)がおかれ、その周りを薬師如来、文殊菩薩像などが立ち並んでいる。

中でも、左端に見える国宝、11面観音像は大変
好きだ。

この写真の前に様々な姿で立ち並んでいるのが、重文12神将像だ。一体一体じっくりとみれば見るほどユニークな姿をしている。
小ぶりで、威圧感はないが、独特の存在感を示している。
新薬師寺でも紹介したが、12神将は薬師如来を守護する眷族。
東寺、興福寺その他たくさんの12神将があるが、それだけを訪ねても楽しい。

最後に、室生寺本来の仏像ではなく、他寺からの預かりの仏像、客仏として、
国宝釈迦如来が置かれている。(写真下)
この像は、時間をかけて眺めれば眺めるほど、完成度の高い釈迦如来像だと思う・。
あまり詳しく調べたことはまだないが、ぜひじっくりと拝観されることを願う。

とまれ、女人高野室生寺、次回は是非、雪景色のなかのモノクロームのような室生寺に身を置いてみたい。

2012年11月19日月曜日

千手観音の話

唐招提寺千手観音像
唐招提寺千手観音の手の部分

千手観音像の話


千手観音像には様々な形がある。
一般的な千手観音像は11面42臂(ヒ 一般的に肘から腕までのことをいうらしい)が最も多い。

胸の前で合掌する2本の腕を除いて40の手で囲まれている。また、40本の手は天上界から地獄まで
25の世界があるという
仏教の教えに基づいているようだ。

大阪葛井寺千手観音
 また、眷族として28部衆を従えているのが最も正しい(?)千手観音様の姿のようだ。

その意味では前に紹介した京都三十三間堂の1001体の11面千手観音の姿が、唯一現存する千手観音様を象徴するものだろうか。

しかし、私の知るところでは日本に3体の千本のお手を持っておられる観音菩薩がおられる。
一つが、唐招提寺の千手観音像だ。10年ほどの解体修理を経て、昨年からか直接拝観がかなうようになったが、その大きさと迫力は素晴らしい。
ただ、唐招提寺は盧舎那仏、薬師如来、そしてこの千手観音様と3体で
語らなければならない仏様なので、詳しくは後述しようと思う。
2体目が大阪葛井寺におられる国宝千手観音様だ。坐像で、ちょうど人が座っているような大きさだが、その見事に整った顔や1000の手の整然とした形は、ただ、美しいの一言に尽きる。やさしく、端正な顔立ちで、訪れる人を必ずや満足させてくれる観音様だろう。
寿宝寺11面観音(重文)
三体目が京田辺市、観音寺へ向かう三山木の駅からほど近い場所にある「寿宝寺」の重文千手観音さまだ。
この観音様のおられる寿宝寺は訪れる拝観者も少なく、お寺の住職やおかみさんがお堂の中で丁寧に説明をしてくださる。この観音の置かれた本堂は小さいが観音は2m近くはあるだろう。観音のすぐ近くにすわり、詳しい説明を聞くことができる。なにより不思議なのが明と暗のお顔の違いだ。お堂は暗くしたり、明るくしたりすることができる。
その明暗の変化に合わせて、顔が二つの全く違う仏様に変化する。
この写真は暗い時の顔だが、人を迷わせるすべての悪を許さない、力強く、怖ささえ感じる顔になっている。
明るいところでみる観音は、顔がまさに別の観音のように返信し本当に慈悲のお顔そのものに変わる。

私は、ニッポンでは実際に千本のお手を持った千手観音様を他に知らない。
そして、この3体の千手観音像は一つ一つの世界を守護しようとしてくれているのだろう!!

2012年11月18日日曜日

重文 伎芸天像

 我が国でただ一つの伎芸天像


国宝仏像に少しくこだわってきたが、重要文化財の仏像で、今日の女性の仏像ブームを創り出した一つとも言って
本堂
いい仏様が、、秋篠寺伎芸天像だろう。伎芸天像としては我が国唯一とも言われているが、本当に伎芸天なのかは諸説あるようだ。学問的な考証は別にして、一体の仏像として、女性的で知的な”美しさ”を感じさせる代表的な仏像といえるだろう。


大和西大寺駅からバスで10分程度か、奈良の古い町並みと畑道の中を走るようなバスに乗ると
すぐに到着する。秋篠寺はもちろん、国宝の本堂や伎芸天であまりに有名であることはもちろんだが、お寺全体の風情がなんともいい。苔むした庭を眺めながら寺の中へ入っていくと、急に木立の無い、開かれた場所に秋篠寺本堂が
あらわれる。

この本堂は、12神将の新薬師寺や唐招提寺の本堂を少し小さくしたような感じを与えるが、さほど大きくはないが、どっしりとした、実に落ち着いた気持にさせてくれるお堂だ。
伎芸天像

この伎芸天像は、伝伎芸天像と言われているが、言うまでもなく、頭部と体部とが時代も作り方も全く異なっているということだろう。頭部は脱活乾漆で天平時代作、体部は木造で鎌倉時代作と紹介してある。頭部に合わせて、後に、体を作って合わせたものだろう。それにしても全く違和感がない。その全体のバランスのよさと、美しさは諸仏の中でも群を抜いている。秋篠寺には、帝釈天、梵天像(一説によれば(日光・月光菩薩像)や地蔵菩薩、木造11面観音立像などが、寺所蔵仏像として紹介してあるが、奈良博、東博、京博の3代国立博物館に寄託してあり、すべての仏様を拝観できないのは大変残念だ。
本堂の入り口のすぐ近くに、かすかなスポットライトを浴びて、伎芸天像が置かれている。工事前の東大寺法華堂と
この秋篠寺は、中に座って眺めることができる形になっている。訪れる客をやさしく、やさしく迎えてくれるお寺である。
 
行きはバスやタクシーで訪れ、帰りは秋篠寺から大和西大寺駅まで、のんびりと歩いてかるることが好きだ。
多分20分から30分の間くらいであったと思う、大和の山々、そして町並みをゆっくりと眺めながら訪れてみてはいかがだろうか。
 
 
 
 

2012年11月12日月曜日

名刹 興福寺

四天王像

 <国宝物の宝庫 興福寺>

五重塔、猿沢の池、奈良公園、鹿・・・。興福寺を紹介する言葉に枚挙はないが、
東大寺や法隆寺にも劣らない仏像の宝庫が興福寺だろう。

但し、興福寺の仏像は国宝館収蔵から、東金堂、南円堂、北円堂と分散して
置かれているために、その全体像を把握しにくいが、おそらく20体を超える
国宝仏がちりばめられている。
北円堂の無着・世親像などは比較的拝観時期が長く、お目に書かれる機会も
少なくはないが、南円堂の不空羂索観音像や、四天王像にお目に書かれる
12神将像
機会は非常に少ない。
私も一度しか拝観はかなっていないが、ガイドブックによれば(記憶にはない)
10月の17日のみの特別拝観となっている。
四天王像は、最古の法隆寺四天王像、東大寺戒壇院
四天王像とこの興福寺南円堂の四天王像が、三大四天王像
と私自身は感じている。
法隆寺四天王は比較的垂直に屹立し、”静”のイメージ。
前に紹介した戒壇院四天王は、流れるような動きの中に
あって、一種の静寂と智を感じさせる。
それに比して、興福寺四天王像は、まさに動そのもの。
憤怒の表情で仏を守護しようとしている。



 12神将は国宝館の隣にある東金堂にあり、重文薬師如来と、日光・月光菩薩を守護するように取り囲んでいる。
 この12神将も新薬師寺、室生寺などの12神将像などと同じく、その動きを止めた瞬間の美しさは動の中の静といっ
 た空気の流れを止めるようなうつくしさだ。


金剛力士像

興福寺国宝館には、あまりにも有名な
阿修羅像をはじめ、息を飲むような
仏様が圧倒的な迫力で迫ってくる。

阿修羅は釈迦如来の眷族(従者、配下といった意味か・・)八部衆の一つ。
実物は意外に小さく、まさに少年のような表情で静かに佇んでいる。

この国宝館の中で私が個人的に魅力を強く、強く感じている仏像が
1.金剛力士像(右)
 身体の骨格や筋肉、そして血管のあり
 かさえ感じさせる、最も激しい金剛力  
 士像だ。 
2.天燈鬼・龍燈鬼像
 実にユニークな表情の中にあるが、そ
 の全体の造形の美しさは群を抜いて
 いる。
 
    
3.最後が下段に紹介した「山田
  寺の仏塔」
  山田寺の火災の中で、唯一焼け残った薬師如来の仏頭と紹介され
  ている。

天燈鬼・龍燈鬼像
この穏やかなお顔をした薬師如来像は、全体としてお目にかかった
  らどのような姿をしていたのだろうか・・・。
  想像するだけでも楽しくなってくる。

 以上興福寺には拝観したい国宝仏が非常に多岐にわたっている。

山田寺仏頭


 

天龍鬼・竜燈鬼像は他に走らない。解説書によれば四天王に踏みつけられていた邪鬼を立たせ、灯篭も持たせて仏前を明るく照らす役割を与えたものとあった。

 国宝館と東金堂は、いつでも拝観可能と記憶しているが、南円堂と北円堂
 は拝観時期に制限がある。それぞれの期日をじっくりと調査し、腰を据え
 て、訪れれば、一気に20体余りの国宝物にお目にかかれる素晴らしいお
 寺だと思う。

 ゆっくりと興福寺をお試しあれ!!!






2012年11月10日土曜日

福島 勝常寺

 福島 勝常寺


滋賀、京都、奈良と関西方面の仏像めぐりを続けてきたが、福島でお会いし私自身、大変驚き、感激した仏様を紹介しよう。

東北には、伊達氏三代の栄華の象徴として「中尊寺金色堂」があまりに有名で、世界遺産指定後、観光客が引きも切らないようだが、東北、福島に本当に素晴らしい仏様がおられる。

中尊寺の阿弥陀三尊と極楽浄土を願った金色に輝く金色堂ももちろん素晴らしいことは言うまでもない。

だが、訪れる人もほとんどいない福島県の北会津のさらに宮城よりの湯川村勝常という場所でお会いした薬師如来坐像と日光・月光菩薩の三尊は本当に素晴らしい仏様であった。
現在は本堂には本尊薬師如来像のみで、日光・月光の両脇侍は収蔵庫の中に置かれている。
ガイドブックではお目にかかっており、一度は訪ねたいところであったが、写真と実物の与えるインパクトは全く異なる。
日光・月光菩薩とも一木で、像高は170㎝くらいであったと思う。
その両菩薩より、少し大きい薬師如来像も欅の一木で、漆塗の上に金箔で
装飾されていたようだ。

薬師如来、日光・月光の薬師三尊は奈良西の京の薬師寺があまりにも有名だが、漆の艶が今もって感じられ、完成度としては圧倒的な薬師三尊は薬師寺
であることに全く異存はないが、私の好みから言えば、この勝常寺薬師三尊は、はるかにインパクトが大きかった。
あまり、私自身の期待が大きくなかった割りに、実際のお目にかかった時のインパクトが大きすぎたのかもしれない。


この勝常寺の三尊像は、本当に素晴らしい作品だと感じる。本尊も両脇侍も実に静かに、それでいてふっくらと穏やかにその前にいるものを包み込んでくれるような気持ちにさせられる。わずかに腰をひねり、まるで11面観音様を彷彿とさせる    
                  たたずまいだ。そのボリューム感も圧倒的と言っても良いだろう。
                  これだけの仏様にはなかなかお会いできないと思う。
私がお訊ねした仏様の中で、ガイドブックや写真集の中で感じていた仏様と実際にお目にかかった時に印象が大きく違う仏様の代表がこの勝常寺の三尊であることは間違いがない。長い時間拝観していればいるほど、その美しさや完成度を感じさせてくれる仏様である。冬場は拝観できないし、また、そのアクセスは極めて悪い。レンタカーやマイカーでお訊ねするのがベストだろう。
しかも、事前予約が必要だ。もし、このお寺が奈良や京都にあったら、おそらく人気ベスト10に選ばれるような仏ではないだろうかとさえ思える。
そう、日光・月光両菩薩像は秋篠寺の伎芸天の美しさと11面観音さまの造形美を兼ね備えていると言っても過言ではないだろう。
一度お訊ねすることを是非ともぜひとも進めたい・・。